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手が伸ばされたのがわかって、私は思わず身を固くする。
ぎゅっと目を瞑ったその時、忍くんの大きな右手がふわっと私の耳元を掠めた。
「見てたのは、俺ばっかりじゃなかったんだ…って」
(…………え?)
驚いて目を開ける。
目の前にあったのは、彼の左肩。
暗くても見えるぐらい、近くに忍くんがいる。
さっきまでは感じなかったけど、仄かに甘い香りが鼻をくすぐった。
忍くんの体に染み付いた──甘い甘い、ドルチェの香り。
(…………わ)
後頭部をゆっくりと撫でるように触られて、私は再び強く瞑目した。
何だか……これって、想像以上にドキドキする。
髪の毛ぐらい…って思ってたけど、男の人に触られるのって、こんなにドキドキするんだ。
ハラちゃんの言う通り、恋愛から遠ざかり過ぎてて、私こんなことも知らなかったんだね。
透さんもよく頭を撫でてくれたけど、私はまだ子供だったから……ドキドキよりは、安心感を覚えてた。
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