cinque-2

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手が伸ばされたのがわかって、私は思わず身を固くする。 ぎゅっと目を瞑ったその時、忍くんの大きな右手がふわっと私の耳元を掠めた。 「見てたのは、俺ばっかりじゃなかったんだ…って」 (…………え?) 驚いて目を開ける。 目の前にあったのは、彼の左肩。 暗くても見えるぐらい、近くに忍くんがいる。 さっきまでは感じなかったけど、仄かに甘い香りが鼻をくすぐった。 忍くんの体に染み付いた──甘い甘い、ドルチェの香り。 (…………わ) 後頭部をゆっくりと撫でるように触られて、私は再び強く瞑目した。 何だか……これって、想像以上にドキドキする。 髪の毛ぐらい…って思ってたけど、男の人に触られるのって、こんなにドキドキするんだ。 ハラちゃんの言う通り、恋愛から遠ざかり過ぎてて、私こんなことも知らなかったんだね。 透さんもよく頭を撫でてくれたけど、私はまだ子供だったから……ドキドキよりは、安心感を覚えてた。  
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