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「やっぱり……キレイだね」
耳元で忍くんの声がした。
私はうっすらと目を開く。
サラサラ…と彼の指が、私の髪を梳いていた。
何だか物凄く居心地が悪くて。
どんな体勢でいればいいのか急にわからなくなって。
私は膝を抱えて、体を小さく縮こまらせた。
「………別に。普通だよ」
恥ずかしさを誤魔化すように、少し笑いながら私は言った。
忍くんは何も答えない。
ただ黙って、指を動かす。
雷の音も、雨の音も、何故か全く聞こえなくなった。
代わりに聞こえるのは、うるさいぐらいの自分の動悸と。
彼の微かな息遣い。
「停電しててよかった……」
不意に彼が手を止めて、ポツリとそう呟いた。
私は目線をチラッと彼の方に向ける。
「………どうして?」
「だって……明るかったらこんなこと、絶対できなかった」
「……………」
「真白さんの顔見ながらこんなこと……絶対できねーよ」
引き絞るような、声だった。
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