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「………………」
抗わないでおこう、と。
怖がっていないで、流れに身を任せてみよう、と。
ゆっくりと体の力を抜いた、その時。
────右膝に、激痛が走った。
「…………いっ……」
あまりにも突然痛みに襲われて、私はつい大声を出してしまった。
忍くんの体がビクッと震え、慌てて私から距離を取る。
「………真白さん?」
「…………っ」
「ごめん、俺……強く触った?」
忍くんの声が、聞いたこともないぐらいにオロオロしていた。
どうやら自分がどこか強く触ったことで、私に痛みを与えたのだと誤解したらしい。
私は膝に手を置きながら、力なく首を振った。
この暗闇で、その仕草が見えたかどうかはわからないけれど……。
「………違うの」
「え?」
「膝が痛くて……」
「────膝?」
暗闇の中で忍くんのシルエットが動き、訝しげな声が返ってきた。
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