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「大丈夫? 怪我でもしてんの?」
「……ううん、そうじゃないの」
凄く心配そうに聞かれて、私は笑いながら首を横に振った。
………同時に。
ガラッと雰囲気が変わってしまったことに、私はどこかホッとしていた。
「気圧の関係でね、こんな天気の日は昔の傷が痛むの」
「……………」
忍くんが、息を飲むのがわかった。
さっきまでは何故か聞こえなくなっていた雨の音が、今は鮮明に聞こえてくる。
雷の音はいつしか遠くなっていて、僅かな光すら部屋に射さなくなった。
「………それってもしかして……7年前の、あの事故の……?」
「……………」
何も答えられず、唇を噛む。
事故のことを思い出すのも嫌だったし、透さんの話になるのも嫌だった。
見えないとは思いつつ、私は笑顔を作って懸命に明るい声を出した。
「あ、でもね。普段の生活には全然影響ないんだよ? 雨の日にちょっと痛むぐらいで」
「……………」
「ホントに全然、大丈夫だから」
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