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暗闇の中、妙に明るい私の声がひどく浮いてしまっていた。
私は笑顔を収め、唇を噛み締めながら俯く。
しばらく何も答えないでいた忍くんが、やがて小さくふっと息を吐き出した。
「雨……結構小降りになってきたよね」
「………………」
「さすがにもう帰ったほうがいいよ。今日は俺、車出すから」
ギシッとソファーが軋んで、忍くんが立ち上がる気配がした。
彼の言葉を耳にし、私は目を見開いてバッと彼の顔を振り仰いだ。
「忍くん……車運転するの……!?」
私の剣幕にびっくりしたのか、忍くんは立ち上がったそのままの姿勢で立ち尽くした。
「そりゃ……運転ぐらいするよ。──そんないい車じゃないけど」
「……………!」
一際雨の音が、激しく鼓膜を打つ。
黒一色だった世界が急に真っ白になり、あの日の光景が突然フラッシュバックした。
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