cinque-2

21/31
前へ
/31ページ
次へ
とうとう堪えきれなくなり、私は忍くんの胸に縋ってワッと大声を上げて泣き伏してしまった。 事故なんて絶対起こさない。 自分は絶対にいなくならない。 口にした忍くんでさえ、そんなことは何の保証もないことはわかっているのだろう。 現に透さんは、誰も全く想像していない形でこの世を去ってしまった。 ………それでも。 たとえ、気休めだったとしても。 力強く忍くんがそう言い切ってくれたことで……。 私の心は、驚くほど軽くなっていた。 ぎゅっと抱きしめてくれた忍くんの手が、すごく温かかったから。 耳に押し当てた彼の胸から伝う鼓動が、とても優しかったから。 それらの全てが、忍くんが今生きてる証なんだ…って思ったら、信じられないぐらいに安心してしまって……。 私は甘えるように、忍くんの胸に頬を擦り寄せた。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

363人が本棚に入れています
本棚に追加