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「やっぱり……車乗るの、まだ怖い?」
私が口を開きかけたところで、忍くんにそう尋ねられた。
ドキッとして、私は窓の外に目を走らせる。
小降りになったとはいえ、依然雨はしとしとと降り続いていた。
胸元でぎゅっと手を握り、私はコクリと頷いた。
「雨の日は、どうしてもまだ乗れないの」
「……………」
「濡れた道路が……怖くて怖くてしょうがないの……」
ライトを反射するアスファルトや、水を滑るタイヤの音。
それらを五感が拾う度、あの日のことを思い出して右膝が疼く。
ましてやそんな日に、車なんて乗れる訳がない。
「ん。……わかった」
「……………」
「じゃあ……歩いて帰れる?」
忍くんは、すごく優しくそう聞いてくれた。
本当に私のことを心配してくれてるんだ、って思ったら、何だかまた泣きそうになってしまって。
もっと忍くんと一緒にいたい…って。
────そう、思ってしまった。
「…………泊まっていこうかな」
半分冗談、半分本気で、ポツリと言葉を漏らすと。
忍くんは唖然としたように、私の顔を見上げた。
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