cinque-2

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ハラちゃんに散々言われて自覚はあったけど、改めて自分の恋愛偏差値の低さを痛感する。 それと同時に、本当に好きになった人以外の前でこんな発言しちゃいけないんだってことも、よくわかった。 忍くんは、隙を見せたからってそこに付け込むような人じゃないと思うけど……もしかしたらやんわりと、忠告してくれたのかもしれないな。 男の前で、軽はずみにそんなこと言うな……って。 「────マジでもう、帰ったほうがいいよ」 何と忍くんに声をかけようかとあれこれ考えていたところで、先に忍くんがそう口を開いた。 私はハッと顔を上げる。 忍くんはそこで再び、私を振り返った。 「ホントにもう、遅いから」 「え、あ……でも」 微かに見える忍くんの手に、私はチラッと視線を走らせる。 「マニキュア、落とさないと……」 「……あー」 忘れてた、というように、忍くんは右手を開いて自分の指先を見つめた。  
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