cinque-2

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「……いい、もう。自分で取る」 「え、でも……。慣れてないでしょ。ゴシゴシやると、爪痛めるよ」 「じゃあ、ネットで調べる。だから……何だっけ。除光液、だっけ。それ貸しといて」 「………それは……別にいいんだけど」 私のワガママに付き合わせたうえに、そこまで忍くんにさせてしまうのが申し訳なくて、何となく語尾を濁して佇んでいると……。 忍くんはテーブルに置いていた鍵をひっ掴み、ザッと勢いよく立ち上がった。 そうしてスタスタと、目を伏せたままこちらへ向かって歩いてくる。 私の横を通り過ぎざま、彼は聞こえるか聞こえないかの声でボソッと呟いた。 「今、手とか触られんの、マジで無理だから」 目を見開いて彼を振り返ると、忍くんは既にリビングを出て玄関へと向かっていた。 電気消してきて、という声だけが返ってくる。 私は慌ててテーブルの上のマニキュアなどを片付け、代わりに除光液をそこに置いて立ち上がった。 「………………」 速い鼓動を隠すように、胸にバッグを抱え込む。 リビングの電気を消し、私は小走りで忍くんの後を追いかけた。 靴を履いている彼の背中が視界に入り、軽く唇を噛む。 確かに……そうだよね。 今は私も……平常心では忍くんの手に、触れそうにないよ。  
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