cinque-2

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「………見えなくなっちゃった」 「え?」 「マニキュア。せっかく塗ったのに」 次は私が溜め息をつく番だった。 丁寧に丁寧に塗って、仕上がりを見るの楽しみにしてたのに。 手の全体を見る前に停電になるなんて、運が悪すぎる。 「スマホで手元照らせば?」 「え~。何かそれ違う」 「つーか…。電気ずっと点かなかったら、どーなんのこれ」 「それは……。リムーバー置いてくから自分で取ってもらうしかないよね」 「………マジか」 嘘だろ、とでも言いたげな声に、私は口元を押さえて笑ってしまった。 外灯も月明かりもないからほとんど何も見えなかったけど、忍くんの声と気配が近いことに安心して、私はようやく忍くんの腕から手を離した。 「………………」 ザーザーと激しい雨の音が、余計に室内の静寂を感じさせる。 もう平気だと思ったのに、忍くんの温もりから離れたことで、予想以上に心細くなってしまった。 「雨……もう少し弱くなるまで、ここにいてもいい?」  
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