cinque-2

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透さんはもういない……忘れろって言ったのは忍くんなのに。 それでも私はまだ、『触れちゃいけない人』なの……? 私は、さっき肩を抱いてくれた忍くんの手の温もり、まだ覚えてるのに……。 「真白さ……」 「いるよ、ちゃんと」 雨の音を破るように、私は凛と答えた。 「遠くないよ。すぐ近くにいるよ」 忍くんが、ハッと息を飲む気配がする。 再びサッと白い光が射し込んで、二人の姿がポッカリと浮かび上がった。 そしてまた、すぐに消える。 少し間が空いてから、ゴロゴロゴロ…と、遠ざかっていく雷の音が響いてきた。 「………真白さん」 目の前で、シュッと衣擦れの音がした。 私は膝を抱えたまま、じっと忍くんの次の言葉を待つ。 姿は見えなくても、忍くんが何か逡巡しているのだけは伝わってきた。 長い沈黙と雨の音が、徐々に私の緊張を煽っていく。 「────触っていい? 真白さん」 しばらくして、意を決したような忍くんの声が、耳のすぐ側で聞こえた。  
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