400人が本棚に入れています
本棚に追加
その仕草を見て、私は何だか不思議な気持ちになる。
忍くんて……人の目を見て話すのが苦手なのかな。
暗闇の中なら、あんなに大胆なこと言ったりしたり出来るのに……。
その瞬間、先程の一連のことが脳裏に蘇り、私の頬にカッと熱が走った。
(うわ……思い出しちゃった……)
時間にしたら多分 10分もなかったと思うけど、あの停電の中での一時は、恋愛偏差値の低い私の心臓をフル活動させるには充分だった。
特に髪に触られたあの時のことを思い出したら……。
今でもちょっと、心臓がヤバい。
そう言えば忍くん……あの時何か言いかけてたと思うんだけど。
────何を言おうとしてたんだろう……。
「じゃあまた、次の木曜日」
熱くなった頬を片方だけ押さえて俯いていると、忍くんはそう言ってサッと踵を返しかけた。
私は我に返り、弾かれたように顔を上げる。
最初のコメントを投稿しよう!