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『ごめん。今からゼミの集まりがあるから、迎えに行けないんだ』
駅の構内で、濃いグレーの雨空を見上げる私の耳に、透さんの申し訳なさそうな声が響いた。
透さんに会えるかも、なんて淡い期待が脆くも崩れ去り、私はガックリと肩を落とす。
でもそれを押し隠して、私は明るい声を出した。
『ううん、全然平気』
『………ホントに? 傘持ってないんだろ?』
『大丈夫。小降りになったら歩いて帰るから』
『そう……。ごめんな、マジで』
『ううん、こっちこそ。忙しいのに電話してごめんね』
通話の切れた携帯を見つめ、私はふっと溜め息を零した。
学校を出た時は晴れていたのに、一駅分電車に乗って外に出ようとすると、何故かどしゃ降りだった。
大学に入ってから透さんが結構忙しくてなかなか会えなかったから、これをきっかけにちょっと顔見られるかな…なんて、思ったんだけど。
───やっぱり無理だったか。
ゼミってよく聞くけど……正直よくわからない。
ただ凄く大学生っぽくて、時々透さんが遠い人みたいに思えてしまう。
受験は嫌だけど……早く私も大学生になりたい。
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