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「膝がね……痛くなったの」
「………膝?」
「うん」
頷いて、私は何となく窓の外に目を向けた。
「停電になって、忍くんの側にいて……ドキドキして。……あの時は完全に私、透さんのことは頭になかった」
「……………」
「忍くんでいっぱいになって。……もうこの雰囲気に逆らわないで、流れに身を任せようって思ったの。───その瞬間、急に右膝が痛くなって……」
そこで私は、ゆっくりとハラちゃんに視線を戻す。
あの日の事故が原因で私の右膝に後遺症が残ったことを知っているハラちゃんは、何とも言えない表情になった。
完全に食欲が失せた私は、カチャリとフォークを横に置いた。
「その時にね、思ったの。……忍くんだけはダメだって、透さんが言ってるのかな…って」
「────そんな訳ないでしょ」
キッとハラちゃんの目が鋭くなり、声のトーンも低くなった。
私はじっとハラちゃんの顔を見返す。
ハラちゃんは、怒ったような表情でグイッとこちらに身を乗り出してきた。
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