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その日家に戻ってから。
私は机の引き出しの奥に仕舞い込んでいた写真立てを引っ張り出した。
それを持って、ベッドの上に移動する。
「………久しぶり。……透さん」
壁に凭れて、私はフレームの中で微笑む19歳の透さんに話しかけた。
写真撮られるのが苦手で、カメラを向けるといつもはにかんだような笑顔になる。
二つ年上で、すごく大人びていると思っていた透さんの顔は、今見るととても幼く見えて───。
私は笑いながら、滲んできた涙をそっと指で拭った。
「………ねぇ、透さん。……私今ね、忍くんと仲いいんだよ。……びっくりでしょ? あの時の私達から、想像つかないでしょ?」
話しかけても、当然透さんは何も答えない。
………ただ穏やかに、微笑んでいるだけ。
「………透さん。……私、忍くんともうちょっと、近付きたいって思ってるの。───許してくれる?」
そこでやっぱり我慢出来なくなって、私は写真立てを伏せて膝の上に顔を突っ伏した。
────応援してくれ、とは言わないから。
透さんのことを、忘れてしまう訳じゃないから。
だから思い出に変えて、次に進んでも。
………いいよね?
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