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『………………』 声のした方を、恐る恐る肩越しに振り返ると。 淡い藍色の詰め襟を着た忍くんがそこに立っていた。 青みがかった静かな瞳を見て、無意識に息を飲む。 うわ……どうしよう……。 もう来ちゃったよ……。 この顔、怒ってるの? 怒ってないの? どっちなんだろう……さっぱりわからない。 『し、忍くん……。こんにちは』 観念した私は、何とか笑顔を作りながら体ごと忍くんに向き直った。 忍くんはペコリと小さく頭を下げる。 『………どーも』 『……………』 うう。仕草も言葉もいつも通りすぎて、怒ってるかどうかの判断がつかない。 でも多分この感じは……怒ってはいないっぽい……のかな。 『あ、あの……、ごめんね?』 『え?』 『私あの、一人で帰るから。……だから忍くん、帰ってくれていいよ』 『………いいよ、別に。用事もないし』 『で、でも……なんか悪いし』 『別に悪くないよ。それに……俺が兄貴に怒られる』 ピシャリとそう言われて、私は畏縮して黙り込んだ。 ………これ以上遠慮すると、かえって怒らせてしまうかもしれない。  
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