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『家、どっち?』
未だ戸惑う私を尻目に、忍くんはさっさと踵を返そうとした。
私はハッとして、慌てて彼に駆け寄る。
『あの……こっち、です』
自宅の方向を指で差し示すと、忍くんは無言でパッと青い傘を開いた。
そうして私を振り返る。
恐縮しながら、私はその傘の中に潜り込んだ。
『………………』
『………………』
(う。……気まずいな)
案の定、並んで歩いていても会話は全くなかった。
傘を弾く雨の音だけが、耳に響き渡る。
しかも一つの傘に入っているというのに、私と忍くんの間には小さな隙間があった。
端から見て、私達ってどんな関係に見えるんだろう。
一見してカップルっぽいけど、会話も笑顔もないし……微妙に距離が空いてるし。
『………………』
歩きながら、チラッと忍くんの顔を見上げる。
そう言えば、学ラン姿って初めて見るな……。
この辺りでは有名な進学校、光明高校の淡い藍色の学ラン。
この辺の女子高生は、みんなここの生徒と付き合いたがってるんだよね。
忍くんが光明高校の生徒だって初めて聞いた時は、びっくりしたっけ……。
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