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『あ、あの……忍くん』 沈黙に耐え兼ねて、私はオズオズと口を開いた。 『ホントにごめんね。忍くんに迷惑かけるつもりはなかったんだけど……』 『───別に。迷惑とか思ってないよ』 前を向いたまま、忍くんはボソッとそう言った。 私は少し俯いて苦笑する。 『透さん、最近忙しいでしょ。だからちょっと寂しくて、不安になっちゃって……雨だから迎えに来てって言ったら、久しぶりに会えるかなって、ちょっと欲出しちゃったの』 『……………』 『ワガママに巻き込んじゃって……ごめんね』 忍くんは無言でじっと私の話を聞いていたけど、しばらくしてふっと小さく息を吐き出した。 『別にそんなの、ワガママじゃないんじゃない』 『え?』 『心配しなくても、兄貴は心底真白さんに惚れてるよ。───だからわざわざ、俺に迎えに行けって言ったんだろうし』 私はびっくりして忍くんの横顔を見つめる。 『どういう……こと?』 『他の男に送られんの嫌だったんだろ。……兄貴の中で俺は、安全圏みたいだから』 『……………』 最後の部分を言う時、忍くんの声にはどこか苛立ちが滲んでいるような……。 そんな風に、私は感じた。  
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