289人が本棚に入れています
本棚に追加
「………鼻声になってるじゃない。風邪ひいたら、仕事行けなくなっちゃうよ」
『ん。マジでそろそろ帰る』
「ホントに、湯舟にしっかり浸かって温まってよ」
『………わかったって』
苦笑混じりに答えたあと、忍くんはふっと小さく息をついた。
『じゃあね、真白さん。……おやすみ』
「……ん。おやすみ」
ベッドから足を下ろしながら短く答える。
何を言うでもなく、何故か通話はなかなか切れなかったのだけど。
しばらくして、プー、プー、と無機質な音がスマホから聞こえてきた。
「……………」
スマホをゆっくり耳から離し、私はしばらくぼんやりとそれを眺めていた。
経験したことのないような色んな感情が押し寄せてきて、息が苦しくなる。
切なくて、温かくて……でもやっぱり、切なくて。
忍くんを好きになり始めてるのかもしれないって思ったけど……本当にそうなのかな。
だって透さんを好きだった時は、こんなに胸が締め付けられるような痛みは感じなかった。
────私の中での『恋』の思い出は……もっとキラキラしていて、楽しかった。
最初のコメントを投稿しよう!