sette

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「………鼻声になってるじゃない。風邪ひいたら、仕事行けなくなっちゃうよ」 『ん。マジでそろそろ帰る』 「ホントに、湯舟にしっかり浸かって温まってよ」 『………わかったって』 苦笑混じりに答えたあと、忍くんはふっと小さく息をついた。 『じゃあね、真白さん。……おやすみ』 「……ん。おやすみ」 ベッドから足を下ろしながら短く答える。 何を言うでもなく、何故か通話はなかなか切れなかったのだけど。 しばらくして、プー、プー、と無機質な音がスマホから聞こえてきた。 「……………」 スマホをゆっくり耳から離し、私はしばらくぼんやりとそれを眺めていた。 経験したことのないような色んな感情が押し寄せてきて、息が苦しくなる。 切なくて、温かくて……でもやっぱり、切なくて。 忍くんを好きになり始めてるのかもしれないって思ったけど……本当にそうなのかな。 だって透さんを好きだった時は、こんなに胸が締め付けられるような痛みは感じなかった。 ────私の中での『恋』の思い出は……もっとキラキラしていて、楽しかった。  
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