sette

12/22
前へ
/22ページ
次へ
「言っとくけど俺、中立だからね?」 「………?」 顔を上げて眉をひそめると、本田さんはいたずらっぽい笑みを見せた。 「やっぱ後輩はみんな可愛いから、萌の恋も応援したいし、忍の恋も応援したい」 「……………」 「だから真白ちゃんの敵になるか味方になるかは、まぁ今のとこ未定ってことで」 そこで本田さんはずっとポケットに突っ込んでいた左手を出して、頭上で大きく手を振った。 「じゃあまたねー。よかったら今度は店にパスタ食べに来てねー」 相変わらず飄々とした様子で一方的に捲し立て、本田さんはようやく背中を向けて歩き始めた。 何故かどっと疲れを覚え、私はその後ろ姿をぼんやりと見送る。 何て言うか……悪い人じゃないのかもしれないけど、絶対的に相容れないタイプの人だ。 『またね』って言ってたけど──願わくば二度とお目にかかりたくない。 「………ただいま」 玄関のドアを開け、力ない声を出す。 よほど声が小さかったのか、リビングにいるはずの両親は無反応だった。 「……………」 ブーツを脱いで溜め息をついたその時。 バッグの中で、スマホの着信音が突然鳴り始めた。  
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

289人が本棚に入れています
本棚に追加