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「言っとくけど俺、中立だからね?」
「………?」
顔を上げて眉をひそめると、本田さんはいたずらっぽい笑みを見せた。
「やっぱ後輩はみんな可愛いから、萌の恋も応援したいし、忍の恋も応援したい」
「……………」
「だから真白ちゃんの敵になるか味方になるかは、まぁ今のとこ未定ってことで」
そこで本田さんはずっとポケットに突っ込んでいた左手を出して、頭上で大きく手を振った。
「じゃあまたねー。よかったら今度は店にパスタ食べに来てねー」
相変わらず飄々とした様子で一方的に捲し立て、本田さんはようやく背中を向けて歩き始めた。
何故かどっと疲れを覚え、私はその後ろ姿をぼんやりと見送る。
何て言うか……悪い人じゃないのかもしれないけど、絶対的に相容れないタイプの人だ。
『またね』って言ってたけど──願わくば二度とお目にかかりたくない。
「………ただいま」
玄関のドアを開け、力ない声を出す。
よほど声が小さかったのか、リビングにいるはずの両親は無反応だった。
「……………」
ブーツを脱いで溜め息をついたその時。
バッグの中で、スマホの着信音が突然鳴り始めた。
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