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「せっかく塗らせてもらったのに、結局全然見れなかった」
『まぁ、停電になったし……』
「もう一回塗らせてって言ったら、怒る?」
『怒りはしないけど……困る』
「それって要するに……拒否ってこと?」
『………まぁ、そう理解してくれれば』
「ふふっ」
私は思わず吹き出してしまった。
忍くんのこの物言いからして、ホントの本音は物凄く嫌だったんだろうなぁ…って、改めて思う。
今こうして拒否するってことは、逆に少しは二人の距離が縮まったってことなのかな。
それからしばらく他愛のない話をしていたのだけど。
ある瞬間、私はふと壁掛けの時計を見上げた。
(………あれ?)
家に着くまで…って言ってたけど、あれからもう有に15分は経ってるよね?
古川さんの家スゴく近いって言ってたのに……もしかして、コンビニでも寄ってる?
「ねぇ、忍くん?」
『ん?』
「………まだ、着かないの?」
探るように聞いてみると。
しばらくの沈黙の後、少し恥ずかしそうな忍くんの声が聞こえた。
『────ごめん。ホントはもう、とっくにマンションの前』
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