sette

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マンションを出ると、もう殆ど冬のように厳しい寒さだった。 私は襟を合わせ、首をすくめる。 エントランスからの階段を下りて歩道に出た瞬間、すかさず古川さんが忍くんの上着の袖口を引いた。 甘えるように、下から忍くんの顔を見上げる。 「楢原さん、送ってくださいよー」 どうやら古川さんの家は、私の家とは逆方向らしい。 忍くんは少し困ったような顔で、古川さんを見下ろした。 「いや、でも……。俺、真白さん送らないと……」 すると本田さんが私の横にスッと立ち、忍くんに向かって軽く手を上げた。 「あ、真白ちゃんは俺が送ってくから」 「……………」 さっきの会話で何となくこの展開を予想していた私は、内心でやっぱりか、と嘆息したのだけど。 忍くんにとっては寝耳に水だったらしい。 一瞬ポカンと不思議そうな顔をした直後、訝しげに眉をひそめた。 「………は?」 「だから、真白ちゃんは俺が送ってく」 「いや、おかしいでしょ。真白さんは俺の知り合いですよ?」 「でも家の方向同じだし。ついでだから」 「……いや、でも……」 忍くんはかなり焦った様子で、珍しくその声は上擦っていた。  
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