sette

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驚いた私は凭れていた壁からガバッと身を起こした。 「マンションの前って……どういうこと!? とっくに着いてたんなら、どうして家に入らないの?」 『……………』 「外すっごく寒かったのに……風邪ひいちゃうよ?」 さっきまでの外の気温を思い出し、私は急激に忍くんのことが心配になってきてしまった。 マンションの前で話してるってことは、立ち止まってるってことだよね? 体冷えて、風邪ひいちゃうよ……。 『………だって、家に着いたら電話切らなきゃ』 「……………!」 『今日はゆっくり二人で話できなかったから……もうちょっと真白さんと話したかった』 胸がつかえて、私は何も言えなくなる。 嬉しくて……でも忍くんのことが心配で、私はぎゅっとスマホを持つ手に力を込めた。 「………忍くん……」 『あー…ごめん。自分勝手だな、俺。真白さんも今から色々やることあるよね』 「それは別に大丈夫だけど……」 『ん、もう戻る』 そこで忍くんが、スンッと鼻を啜る音が聞こえてきた。  
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