sette

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本田さんは腕を組み、少し威圧的にも聞こえる声で言った。 「じゃあ何。俺に反対方向の萌送れって言うの」 「……………」 ぐっと忍くんは言葉に詰まる。 そうして困ったように、私にチラッと視線を投げてきた。 そりゃ私だって忍くんに送ってもらいたいけど……でも、とてものことそんな本音を言える雰囲気ではなかった。 忍くんは小さく目を伏せ、両の拳を静かに握りしめた。 「でも……真白さんも、初対面の人だと気使うと思うし……」 ────多分、言葉遣いからして。 本田さんは忍くんの先輩で、強く自己主張できない相手なのだろう。 職場の上下関係なんてただでさえ理不尽なことは多いし、ましてや人と関わるのが苦手な忍くんが、先輩に意見することなんて滅多にないことなんだろうな…って思ったら。 忍くんに対して、何だかとても申し訳ない気持ちになってきてしまった。 ピンと張り詰めた空気にいたたまれなくなって俯いていると。 更に追い打ちをかけるように、古川さんが口を開いた。  
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