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「そうなんですか、真白さん? 本田さんだと気を使うんですか?」
「……………」
「でもさっき、二人で楽しそうに話してましたよね? 私と楢原さんがキッチンにいる時」
含みのある言い方をされて、私はキッと古川さんの顔を仰ぐ。
目が合い、古川さんは忍くんの腕にしがみつきながらニコッと強気な笑顔を見せた。
バッグを持つ私の手に、無意識に強い力が込もった。
「あの、私…。一人で帰れるので」
「え。真白さ……」
「それじゃ、失礼します」
ペコリと頭を下げ、私は勢いよく踵を返して歩き始めた。
………もう、たくさんだ。
こんな思いをするぐらいなら、一人で帰った方がよっぽどマシだ。
「真白さん……!!」
忍くんの大きな声が、私の背中を追いかけてくる。
でも、こんな時の上手い対処の仕方もわからなくて、今振り返ると涙が零れてしまいそうで。
私は歩く足を、止めることが出来なかった。
「……………」
忍くんとの時間を邪魔されたことが、こんなに悔しいなんて……。
忍くんのことを好きな女の子がいるってことが、こんなにショックだなんて……。
「─────待って!」
その時、背後から大きな声をかけられ。
グッと強く、肩を掴まれた。
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