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その時ちょうど横断歩道の信号が赤に変わり、私と本田さんは足を止めた。
それと同時に、何故か本田さんの饒舌もピタリと止まった。
目の前を何台も車が通り過ぎていく。
ようやく少しずつ気持ちが落ち着き始めた私は、信号が青に変わったタイミングで初めて自分から口を開いた。
「………なんで、ですか?」
「え?」
「私と話したかったって……何でですか?」
質問と共に吐き出した息は真っ白だった。
ずっと黙って聞くだけだった私がいきなり話し出したので、一瞬本田さんはびっくりしたようだったけど。
すぐにさっきまでの飄々とした様子で、ニッと笑った。
「忍の惚れた子がどんな子か、興味あったから」
「……………」
(…………え?)
ちょうど横断歩道を渡りきったところで、私は歩く足を止めた。
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