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「よしっ、じゃあ自転車寄越せ、運んでやろう」
先輩が少女漫画に出てきそうな爽やか笑顔で私の自転車に近づく。
「あっ、けっこうです~お気遣いなく~」
スッと自転車を遠ざけ、またお手本のような笑顔で拒否。
さすがにそこまでしてもらう義理はない。
すると渡邉先輩は少しムッとした顔になり、半場強引に私から自転車を奪った。
「あっ、」
「俺が運んでやるって言ってんだ。素直に任せてくれよ」
ふて腐れた顔でぶーぶー言われる。
ここまでされるともう煮るなり焼くなり好きにしてって言いたくなる。
まあ、さすがにそんなことは言わないけど。
ここは相手の好意に素直に従っておくことにしよう。
私はペコリと頭を下げ、お願いしますと一言口にする。
こういうタイプは流れに身を任せ、素直にすることが大事だ。
「よし、じゃあ行こう」
すると案の定渡邉先輩は、ふて腐れ顔から爽やか笑顔に戻った。
先に自転車を引きながら歩く、先輩の少し後ろをついていく。
「はぁ…」
コロッケは美味しいけど、やっぱりめんどくさい。
3つ賄賂で貰った私が言える義理ではないが。
するとパッと渡邉先輩が振り向いてきた。
「柚姫、お前」
「なんですか?」
渡邉先輩が少し気を使わしげに、視線を泳がす。
「今ぶっちゃけ、俺と一緒に学校に行くのめんどくさいとか思ってたり…?」
わぁお!!
おめでとうございます!!ビンゴです!!
この人エスパーかなにかなのか?!
「すごいです正解です!!何で分かったんですか!?」
その瞬間先輩はガクリと肩を落とした。
「否定しないのか…」
先輩が困ったように笑う。
「だって本当のことですもん」
私も最後の一撃を食らわす。
だって嘘は良くないって死んだバーちゃんが言ってた。
すると先輩はぶふっと吹き出し、しまいには大笑いし始めた。
えっなにかおかしかった?
「何がおかしいんですか?先輩!!」
聞いても笑い続ける。
やだ、この人頭おかしい。
エスパーじゃなくて頭おかしい。
この人チョー怖い。
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