さっそくバイトを辞めたいです

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私がなんでこの何とも“濃い”事務所に働き始めたのかというと、説明すると長くなる。 だが、ひとつだけ言えることがある。 ここの探偵事務所の社長に騙された。 あの脳内が低脳でお子さまで我儘で仕事をなんでも押し付けてくるあのイケメンの社長に!! 要するに私は社長の笑顔に騙された。 (詐欺だよこれ…) 私は面接の時の事を思い出しながら溜め息を吐いた。 今すぐ過去に戻って自分を殴り倒したい。 でもいくら嘆いても遅いのだ。 腹はとっくに括れているが、ため息が出る一方である。 私が低脳お子さまと騒いでいるこの人物。 我が探偵事務所社長の「櫻宮光輝」《さくらみやこうき》。 俺様な性格は通常運転。味覚はお子さま。 容姿は悔しいことに、すっごいイケメン。街を歩けば全員が振り返るくらいイケメン。 本人もそれを自覚しているからなおさらウザイ。 この私もこいつの笑顔に殺られた一人である。 少しときめいた時もあるが、今は全然である。 こいつだけは絶対にない。 人を道具のように扱うひどいやつだ。あーやだやだ。 もう一人、会計役の「葉嶋暦」《はじまこよみ》。 本物のレズである。 仕事を完璧にこなし、美貌を持ち合わせた才色兼備の持ち主。 仕事に関しては尊敬しているが、正直この人は冗談が冗談に聞こえない節がある。 「柚姫ちゃん、今日空いてる?よかったら大人の遊び…しない?」 「柚姫ちゃんて出るとこ出て絞まるとこ絞まってるわよね?羨ましいわ…その秘訣教えてくれないかしら、手取り足取り…」 そんな具合によく日常的に言われる。 最所こそは笑って流していたが、最近はガン無視するようにしている。 社長に以前「あいつ本物だからな…不用意に近づくなよ」と言われ冗談かと思っていたらマジだった。 最後に私「朱座柚姫」この春から大学一年生。 役職はアルバイト兼、秘書兼、雑用だ。 つまりなんでもやる。 事務所から徒歩30分くらいの場所にある川嶌大学に通っている。 文系で、サークルは旅行サークルに入っている。 両親はいないので一人暮し。1Kのアパート住み。 常に金欠。 説明はこんなところだ。 私は溜め息を吐きながらカフェオレ並みに甘くしたコーヒーと、真っ黒なブラックコーヒーをお盆にのせ、キッチンに背を向けた。
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