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いきなり隣に現れた人物に心臓がバクバクする。
お分かりだろうがときめいたからではなく、『驚いたから』だ。
少し心臓をなだめて、最近仲良くなったその人物に非難を浴びせる。
「ちょっと俊騎先輩!!居るなら居るって一言くらい…」
当の本人は軽く「わるいわるい」と言いながらにこにこ笑う。
絶対反省してねーだろ
この人物、『渡邉俊騎』《わたなべとしき》は、同じ科で、同じサークルの三年生の先輩である。
明るいが、場の空気を読み、回りを考えてから行動に移すことができる“できる人”だ。
他にもサークルを掛け持っていて、確かバスケだった気がする。
誰に対しても同じように接してくれるので、私もこの先輩のこと嫌いではない。
「ちょっと先輩ってば…ぅおっと」
私がもう一言言ってやろうと近づくと、今私が持っている袋と同じ袋を押し付けられる。
「悪かったってば!柚姫、これで許せ」
いつの間に買ったんだこの人…
袋の中身を覗くと、コロッケが3つ。
怒っていたことなど忘れて、少し顔が綻ぶ。
「えっ良いんですか!?…じゃなくて!!おはようございます!!」
「そこかよ!おはよう!!」
突っ込みを入れながらも、最近満面の笑みで挨拶を交わしてくれた。
「お前も学校だろ?一緒にいくか?」
ぶっちゃけ一人でトゥーッと行った方が早いし楽なのだが、先輩のお誘いをむげに断ることもできず(コロッケ貰ったし)
。
相変わらず私って現金なやつだなってしみじみ思う。
この間0.5秒。
次の瞬間にはお手本のような笑顔で頷く。
「はい、是非!!」
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