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「そうだ、お鍋しない?」
両手を合わせ、私は笑顔でパッと忍くんの顔を仰いだ。
忍くんは意表をつかれたように目を丸くする。
「………鍋?」
「うん。寒くなってきたし、ちょうどよくない?」
鍋なら仕事帰りにサッとスーパー寄って材料買って、着いてからでもすぐに作れるし。
じっと忍くんの返事を待っていると、しばらくして忍くんは嬉しそうにふわっと笑顔になった。
「俺、誰かと鍋とか久しぶり」
「……………」
「マジですげー楽しみ」
屈託ない笑顔を向けられて、私は何も言えなくなる。
………こんな顔見せられたら……怒りが持続する訳ないよね。
私はそっと苦笑して、忍くんの顔を見上げた。
「お酒、いっっぱい買っといてね」
「いっぱいって、どれぐらい?」
「ビール、酎ハイ、日本酒は外せないなぁ」
「酔わないの?」
「うん、全然」
「はは、すげぇ。真白さん、ザル」
そう言って少し笑った後、忍くんはふと寂しそうな、遠い目になった。
「………真白さんと、一緒に酒飲むようになるとは思わなかったな……」
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