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右手で口元を押さえ、すぐ横にあった壁にもたれかかる。
バクバクと鼓動が速いリズムを刻んでいて、私はふーっと息を整えながらゆっくりと天井を見上げた。
(本田さん、あの人……一体何考えてるんだろ……)
さっきの言葉を思い出して、私は天井を仰いだままそっと目を閉じた。
いくら恋愛経験の少ない私だって、本田さんが私に好意を抱いてないことぐらいはわかる。
興味ぐらいはあるのかもしれないけど……恋愛感情なんかは絶対にない。
────だからこそ、あの人の真意が全く見えなくて怖くなる。
こんなに周りを引っ掻き回すようなこと言って、気持ちを掻き乱して……。
本田さんに、一体何の得があるんだろうか。
「………何考えてるんすか」
その時。
リビングから、感情を押し殺したような忍くんの声が聞こえてきた。
閉じていた目を開け、私は息を殺して全神経をそちらに集中させる。
どうやら忍くんが、本田さんに詰め寄っている様子だった。
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