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「コンペが終わってからも、木曜日……真白さんにここに来てほしいんだ」
「────……」
「それで、もっともっと、俺の作ったドルチェ、食べてほしい」
最後は息を吐き出すように、忍くんは一気にそう口にした。
息を止めたまま、私は忍くんの顔を見つめ返す。
コンペが終わってからも……ここに来てほしい。
今、間違いなく、忍くんそう言ったよね……?
聞き間違いじゃ……ないよね?
「…………っ」
苦しくなって初めて、私は自分が呼吸をしていなかったことに気が付いた。
胸を押さえ、ゆっくりと息を吸う。
私が何も答えないので、忍くんの顔にじわじわと不安のような色が広がった。
「あの、もちろん今までみたいに毎週とかじゃなくてもいいから。……真白さんの都合のいい時だけでも、いいんで……」
「……………」
「どんな形であれ、再会して繋がった縁だし……。このまま会えなくなるのは、寂しいな、と……思って」
徐々に忍くんの声は小さくなっていき、とうとうそこで完全に彼は口を噤んでしまった。
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