otto-2

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「ご馳走さまでした」 しめのうどんまできっちり食べ終わり、私達は同時に手を合わせて軽く一礼をした。 ドルチェの味をちゃんと堪能したいから、お酒は控えめにしたんだけど。 気持ちを自覚した今、何だか少し居心地が悪くて。 ちょっとぐらいは酔って、気を紛らわしたいというのが本音だった。 「どうする? もうドルチェ、食べる?」 足を崩した忍くんが、床に両手をつきながらそう聞いてきた。 私はお腹をさすって、少し考え込む。 「お腹はいっぱい、だけど……」 「………うん」 「甘いものは別腹、かな」 そう答えると、忍くんはクスッと笑った。 「じゃあ、さっさとここ片付けてドルチェの用意しよっか」 「…………ん」 それを合図に、私達はお皿を手にして立ち上がった。 シンクの前に並んで立ち、一緒にお皿を洗い始める。 すぐ横に忍くんの体温を感じて、何故だか妙に胸がドキドキした。 ────それはとても、懐かしい感覚。 まだ透さんと付き合う前、図書館での僅かなひと時。 長椅子に座って隣でコーヒーを啜る透さんの体温に、ずっとドキドキしてた。 それを思い出して、急激に胸が締め付けられて。 本当に私は忍くんに恋をしたんだなぁ…って。 改めてそう、実感していた。  
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