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「…………ごめん」
ポツリと呟いた後、忍くんは下げた手を強く握りしめた。
その拳は少し震えていて……。
私は何がなんだか、わからなくなる。
「………なんで……謝るの?」
気持ちの振り幅についていけなくて、私は思わずそう聞いてしまっていた。
だって……何で謝るの?
私はもっともっと、忍くんに触れてほしいって思ってるのに。
もっともっと、近付きたいって思ってるのに。
それなのに何で……。
そんな顔して、まるで悪いことしたみたいに謝るの……?
「────先に俺、真白さんに言わなきゃいけないことがあるんだ……」
「……………」
「それ言う前に真白さんに触るのは……ダメだから……」
そう言うと忍くんは、深く俯きながらデニムのポケットに手を突っ込んだ。
意味がわからなくてただじっと彼の所作を見守っていると。
忍くんは俯いたまま、何やら小さな紙切れを私に差し出した。
「────これ、本田さんの連絡先」
「……………」
「渡してほしいって……頼まれた」
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