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「私が本田さんに連絡しても、忍くんにはどうでもいいことなんだね!」
「……っ、ちが…っ」
「────もういい!」
手にした紙切れを無造作にバッグに突っ込み、私はコートを手にしてスッと立ち上がった。
「………連絡、すればいいんでしょ」
「真白さ……」
「もう、帰る」
捨て台詞のように言い、私は忍くんの横を通り過ぎてスタスタとドアへと向かった。
悔しくて、ショックで。
涙が後から後から溢れてくる。
髪に触れられて、一人で勝手に舞い上がって、ドキドキして。
そのすぐ後で、他の男の人の連絡先を渡されたんじゃ、笑い話にもならない。
────やっぱり私は、恋なんかしちゃいけなかったんだ。
新しい恋をする資格なんか、私にはなかったんだ。
「────真白さん!!」
玄関へ向かう廊下の途中で。
追いかけてきた忍くんに、強く肩を掴まれた。
そのままグルッと勢いよく振り向かされる。
「……………っ」
忍くんの顔が涙でじわりと滲み、私はたまらず彼の腕を振り払おうとした。
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