298人が本棚に入れています
本棚に追加
「────でもやっぱり俺にとって、その人は特別だった」
忍くんの手が、ギュッと強くシーツを握りしめる。
「すっかり忘れたつもりでいたのに、7年ぶりに再会して、あの時の気持ちが一気に蘇ってきて。───再会できたことを、俺は内心ですげー喜んでた」
「……………」
「………初恋だったからなのか、叶わなかった想いだからなのかはわかんねーけど……。気が付いたら、あの時と同じ気持ちで彼女のことを見つめてた……」
「……………」
「一緒にいられることが嬉しくて、楽しくて……。昔は感じなかった欲みたいなものが出始めてきて……」
言いながら忍くんは、まるで自分を恥じるように深く項垂れた。
「────でも、今こうして彼女と一緒にいられるのは、兄貴がいなくなったからで。……もし兄貴が生きてたら、こんな状況には絶対にならなかった……」
「……………」
「そう思ったら、今の状況を喜んでる自分がすげー最低に思えてきて…っ。……俺はもしかしたら心のどっかで、兄貴が死んでよかったって思ってるんじゃないかって……っ」
驚いた私は大きく目を見開く。
忍くんは強く目を瞑り、声を振り絞るようにして叫んだ。
「兄貴にどうしようもなく後ろめたくて、自己嫌悪に陥って。……だからどうしても真白さんに、あと一歩踏み込むことが出来なかった…っ」
最初のコメントを投稿しよう!