nove-2

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涙で濡れた忍くんの睫毛の先に、街灯の灯りが点る。 無防備に流される涙は、とても綺麗で、痛々しくて。 私は、激しく胸を締め付けられた。 (…………忍くん………) 私自身も、溢れてきた涙をそっと指で拭う。 ─────私は、何にもわかっていなかった。 忍くんの心の傷も、葛藤も。 何一つ理解せずに、自分の気持ちばかりを押し付けてしまっていた。 彼がどんな想いで私と接していたのか。 どんな想いで謝っていたのか。 ………ホントに私は、何にもわかってなかったんだ。 『兄貴を忘れること、できる?』 この前の別れ際。 忍くんは、私にそう聞いてきた。 私はてっきり、私との関係を深める為に、私の中から透さんの影を追い出してくれるのかって……そういう意味で聞かれてるんだと思ってた。 でも、今思えばあれは……。 忍くんが、自分自身に問いかけたことだったのかもしれない。 同じように、透さんが亡くなったことで自分を呵責している私に……確かめたかったのかもしれない。 だから彼にもきっと、時間が必要だったんだ。 ────透さんのことを思い出に変える為に、きっと。  
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