nove-2

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彼に向かって、ゆっくりと手を伸ばす。 両手でやんわりと忍くんの頬を包み込むと、彼の体がビクリと大きく震えた。 そのままの姿勢で私は膝立ちになり、おもむろに彼との距離を詰める。 そうして、忍くんが顔を上げると同時に。 …………そっと彼の目元に唇を押し当てた。 「……………」 涙を拭う意味も込めての口付けだったけど。 忍くんはその瞬間、微動だにしなかった。 唇を離して、彼の顔を間近で覗きこむと、唖然としたような忍くんの顔が視界に映った。 あまりにも私の行為が予想外で驚いたのか、目を真ん丸にして私の顔を食い入るように見つめている。 さっきまで聞こえていた嗚咽の声も、息を止めているのか今は全く聞こえなくなっていた。 「………ごめんね、忍くん」 胸が痛くて、胸元で強く拳を握る。 忍くんは微かに、眉を寄せたように見えた。 「………私、何にもわかってなくて……ごめんね」 「……………」 「忍くんがどれだけ苦しんで、どんな想いでいたかなんて知りもせずに……私、自分の気持ちばっかり押し付けてた……」  
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