nove-2

13/22
前へ
/22ページ
次へ
忍くんの濡れた瞳が大きく見開かれ、ゆらゆらと揺らめく。 涙は止まったみたいだったけど、そこにはまだ動揺や戸惑いみたいなものが見え隠れしていた。 私はもう一度手を伸ばし、今度は忍くんの両手を強く握りしめた。 真っ直ぐに、彼の瞳を見つめる。 「忍くんは……最低なんかじゃないよ」 そう呟いた瞬間、私の両目からも涙がポロポロと零れ落ちた。 忍くんがハッと息を飲む。 「忍くんが抱えてきた苦しみの半分も、私はわからないけど……。でも、それだけはわかる」 「……………」 「だって忍くん、こんなに傷付いて、苦しんでるじゃない……」 彼の指を握りしめる手に、私はぎゅうっと力を込めた。 忍くんの心の痛みを思うと、息が詰まりそうなくらいに苦しくなる。 ────その痛みを、ほんの少しでも和らげてあげたいと思った。 「私も始めは、凄く葛藤があった。……透さんのいないこの場所で、何かを楽しいと思ったり、笑ったりして過ごすことは、罪な気がして……」 「……………」 「でもそれは……しょうがないことなんだよ」 繋がれた二人の手の甲に、私の涙が落ちて弾けた。 「だって私達は……生きてるんだもん」  
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加