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口にして、改めて実感した。
私も忍くんも……今、生きてるんだってこと。
生きてるからこそ、苦しんだり、哀しんだり。
────喜びを感じたり。
それはもう、当たり前のことで。
そのことに対して引け目とか負い目を感じる必要なんかないんだ……って、こと。
同じ葛藤を持つ人を目の前にして……私自身、初めて気付かされた気がする……。
「……………」
固かった忍くんの表情が、スッと柔らかくなったように感じた。
まだ少し涙の滲んだ目で、何か問いたげにじっと私の目を見つめる。
私はそれに応えるように、大きく頷いた。
「私も今、やっとわかったよ。……一番大事なのは、過ぎたことをいつまでも後悔するんじゃなくて……これからの人生をどうやって生きていくかなんだ…ってこと」
伏せがちだった顔を、忍くんはゆっくりと上げる。
「これからの……生き方?」
「………うん」
忍くんの両手を強く握りながら、私はもう一度頷いた。
「向こうで透さんに再会した時に、精一杯生きたよって、胸張って言えるように。……だから私も、もう恋愛しないなんて、後ろ向きなこと言わない。───ちゃんとしっかり前向いて、今を生きてく」
「……………」
「それが、今生きてる私達にできる、唯一のことだと思うから」
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