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冷たかった忍くんの指先に、少し熱が戻ったようだった。
さっきまではただ悲痛な色しかなかった顔に、みるみる生気が戻っていく。
片手でグイッと目元を拭いながら、ようやくそこで忍くんは恥ずかしそうな笑みを見せた。
「………真白さんて……やっぱすげぇ」
「え?」
思わぬことを言われて、私はキョトンと首を傾げる。
すると忍くんは目を細めて、優しく微笑んだ。
「昔から、変わってない。……そういうとこ」
「……………」
「言葉一つで、幸せな気持ちにしてくれる。……心を、軽くしてくれる」
そんなこと今まで言われたことも、自覚もなかったから、私は大いに戸惑ってしまった。
………どっちかって言うと、合コンとかでも人を不愉快にさせてきてばかりだったと思うんだけど。
私の困惑が伝わったのか、忍くんは少し笑って私の頬に触れた。
その手にはもう、今までの躊躇いのようなものは感じなかった。
「………再会した真白さんを見る度に、歯痒かった。……まるで、自分を見てるみたいで」
「……………」
「真白さんが兄貴のことを吹っ切って前に進んでくれれば、俺もその後に続ける気がした。……真白さんを幸せにしてくれる人なら。……俺じゃなくてもいいって、思ってた」
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