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さっき忍くんの気持ちを聞かされたばかりだった私は、驚いて身じろぎする。
そんな私の顔を引き寄せ、忍くんは目を閉じながらコツンと私のおでこに自分のおでこを合わせた。
「そう思ってたくせに……本田さんが真白さんに本気だって聞かされた時は、やっぱり嫌だった……」
「……………」
「────今はもう、そんな風には思えない」
目の前で、忍くんの瞼がゆっくりと持ち上がった。
青みがかった瞳を、間近で覗き込む形になる。
頬に、忍くんの吐息がかかった。
「………いいんだよね?」
真っ直ぐに瞳を射抜かれて、私は息が出来なくなる。
ドキドキとまた、鼓動が激しいリズムを刻み出した。
「俺……踏み込むよ?」
────瞬き一つせずに、忍くんはそう言った。
目頭がぐっと熱くなってきて、私は涙を堪えようときつく奥歯を噛み締める。
「……………うん」
答えて、小さく頷くと。
忍くんはそっと合わせていたおでこを離し、両手で私の肩を抱いた。
私の顔を見つめる忍くんの瞳が、切なげに揺れる。
直後、彼が目を閉じ、頬を傾けたのを視界に捉えた私は。
────ゆっくりと瞼を下ろして、小さく顔を上げた。
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