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初めて交わした、忍くんとのキスは。
軽く唇が触れただけの、一瞬だけのものだった。
「……………」
忍くんの気配が少し遠ざかったのを感じて、私はそっと目を開ける。
まだ近いところにあった忍くんの瞳とぶつかり。
「………ふっ」
「ふふっ」
照れて、私達は同時に笑ってしまった。
さすがにファーストキスの時ほどのドキドキはなかったけど。
大好きな人と触れ合う喜びとか、トキメキとか、そういったものが7年ぶりに思い起こされて。
………私は、もっともっと、忍くんと触れ合いたいと感じていた。
「……………」
その気持ちが通じたのか、忍くんも同じように感じてくれたのかはわからないけど。
スッと笑いを収めた忍くんに、グイッと腕を引かれた。
彼の胸に倒れ込み、意表を衝かれた私は驚いて彼の顔を見上げる。
「………何度も何度も、夢に見たよ」
私の頬に触れながら、忍くんがそう呟いた。
私の顔を見下ろす忍くんの瞳が、また大きく揺れる。
「一生、夢から抜け出すことなんかないと思ってた……」
「……………」
「………傍にいても、ずっと遠くに感じてた」
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