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忍くんは親指の腹で、何度も優しく私の頬を撫でた。
「触れちゃいけない人って思いが強くて……一回でも触れたら、取り返しがつかなくなりそうで。……傷付けてしまいそうで、怖かった……」
「………忍くん」
「自分を抑え込むことで、かえって真白さんを傷付けてたなんて気付きもしなくて……」
そう言うと、忍くんはまたコツンと額同士を重ね合わせた。
「真白さんに、あんなこと言わせて……ごめん」
重々しい口調で謝られて、私は首を横に振りながら忍くんの背中に両腕を回した。
ぎゅっと強く、彼の服を掴む。
「本音ぶつけ合えて、よかった……」
「…………ん」
「忍くんの気持ちを、知れてよかった」
ゆっくりと顔を上げ、私は忍くんに微笑みかけた。
「あんなに遠く感じてたのに……今は忍くんのこと、凄く近くに感じるよ」
そう言葉にした瞬間。
無意識にまた、涙がこみ上げてきてしまった。
慌てて涙を拭おうとすると、その手を忍くんがやんわりと掴んだ。
そうして、さっき私がしたみたいに柔らかく私の目元に唇を寄せる。
「……………」
彼の唇が、瞼や目尻を伝って涙を拭ってくれるのが気持ちよくて、私は思わず目を閉じていた。
やがてそれは、ついばむように頬を経て。
最後にまた、優しく私の唇へと重ねられた。
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