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「……っ、離して!」
「待って真白さん! なんで帰んの?」
「もうドルチェ食べたし、用は済んだでしょ!」
揉み合うような形になり、私の手からコートもバッグもまとめて廊下に落ちてしまう。
忍くんは持て余したように、私の手首を掴んだ。
「………真白さん……」
困ったような彼の声に妙に苛立ち、私はキッと強く忍くんの顔を睨み付けた。
「どうして!?」
「え?」
「どうしてこんなの、預かってくるの!?」
「……………」
「こんなの渡せないって、どうして断ってくれなかったの!?」
「────断ったよ!!」
急に声を荒げられて、私はヒクッと喉を詰まらせる。
私の手首を掴む忍くんの手に、ギリッと力がこもった。
「断ったに、決まってるだろ……」
「……………」
「そんなの俺は渡したくないってちゃんと言ったよ! ……でも」
そこで忍くんは、悔しそうにぎゅっと目を瞑った。
「真白さんの気持ちも聞かないで、お前の独断で断る権利なんかあんのかって、言われて……」
「……………」
「………真白さんの未来を、お前が勝手に決めんなっ……て」
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