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「………ごめん。……怖がらせた?」
耳元で囁かれて、私の心臓がドクンと跳ね上がる。
今更ながらドキドキしてきて、私は小さくその場で首を横に振った。
「怖くなんか、ないよ。……でも」
それ以上何を言っていいのかわからなくなり、私は口を噤む。
………そうは言ったけど。
これ以上進んでしまうのは、やっぱりまだ、怖いと私は感じてしまっていた。
「ごめん」
忍くんはもう一度謝り、そこで私の上に重ねていた体をゴロンと横に反転させた。
真横に寝転んだ忍くんは仰向けになり、じっと天井を見上げる。
自分で拒んでしまったくせに、彼の温もりが離れてしまうと淋しくて。
私は横にいる忍くんの首に、強くしがみついた。
「………真白さん?」
少しびっくりしたみたいな忍くんの声が、頭上から聞こえてくる。
私は何も答えずに、甘えるように彼の首元に頬を押し当てた。
(…………甘い匂い………)
彼独特の、体に染み付いたドルチェの香り。
甘くて、どこか苦くて。
────クラクラする。
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