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忍くんの手が、悔しげにブルブルと震え出した。
それを手首伝いで感じながら、私の体からゆるゆると力が抜けていく。
「………………」
それを感じたのか、忍くんの手の力も次第に弱くなっていった。
私は忍くんの手をほどき、溢れた涙を手の甲で拭った。
────忍くんの行動は、確かに理にかなってるのかもしれないけど。
でも、それでも。
やっぱり私は、その場で断ってほしかった。
「………本田さんには、連絡しない」
涙を拭いながら呟くと、忍くんはハッと私の顔を見下ろした。
「真白さ……」
「────私もう、一生恋愛するつもりないから」
「……………」
忍くんの顔色が変わったのがわかったけど、私はそれに気付かないふりをして、落ちたコートを拾おうとした。
その手を、忍くんが強く掴む。
「…………っ」
「何だよそれ!!」
激昂したような声に驚いて振り仰ぐと、さっきまでとは表情を一変させた忍くんの顔があった。
あまりの迫力と、掴まれた手の痛みに私は思わず身をすくませた。
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