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「一生恋愛しないって、何だよ!」
「………私には、恋愛する資格なんかないから」
「資格? 恋愛するのに、資格なんか必要ないだろ!」
気圧された私は、きつく唇を噛み締める。
何も言葉が出てこなくて彼から目を逸らすと、忍くんは私の両肩を掴んでそのまま背後の壁に私の体を押し付けた。
「ついこの前、真白さん言ってたじゃんか……」
「……………」
「兄貴のことは思い出に変えて、前に進もうと思ってるって。……なのにまだ、兄貴に遠慮すんのかよ!」
すぐ側で大きな声を出されて、私はビクッと体を震わせる。
そこでようやく忍くんは我に返ったように、ハッと私から手を離した。
「………っ、……ごめん」
「──────っ」
お決まりの言葉を耳にした私は、カッとなって忍くんの体を強く押し返した。
虚を衝かれたように、忍くんは目を見開く。
「ごめんって、何!? いつもいつも私に触った後で忍くん謝るけど、一体誰に謝ってるの!?」
「……………」
「私!? ────それとも」
その瞬間、収まっていた涙が再びどっと溢れ出した。
「それとも、透さん!?」
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