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「………じゃあ。……よろしくお願いします」
その場で深々とお辞儀をすると。
本田さんは一瞬だけびっくりしたようだったけど、すぐにニコッと屈託ない笑顔を見せた。
「オッケー。じゃあ、行こっか」
本田さんのその言葉を合図に、私達は並んで自宅方向へ向かって歩き始めた。
すぐに本田さんは、話題を振ってくる。
「もしかして女子会?」
「………はい、まぁ。……本田さんは?」
「仕事帰りだよー」
疲れた様子もなく、本田さんは明るく答えた。
忍くんから聞いてはいたけど、ホントにこんな時間まで仕事してるんだ……。
そう思うと、腰掛けみたいな仕事の仕方をしてる自分が、恥ずかしくなってくる。
──── 私も何か、忍くんみたいな大きな目標を持って生きてみたい。
「そういや、忍と上手くいったんだって?」
思考を破られて、私はハッと本田さんの顔を仰ぐ。
目が合うと、本田さんは今までとは違うどこか柔らかい笑みを浮かべた。
「よかったじゃん。おめでとー」
それを聞いた私は、ピタッと足を止める。
歩みを止めた私を、本田さんは不思議そうに振り返った。
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