dieci

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ぼんやりと私は、あの日のことを思い返す。 確かに本田さんは、そう言っていた。 あの時はどうにも信じられなくて、思いっきり否定したけど。 ──── 今思えば、本田さんの観察眼てスゴいんだな……。 「顔には全力で惚れてますって書いてんのに、何回聞いても真白さんはそんなんじゃない、ただ兄貴の恋人だっただけの人だって言い張るし」 「……………」 「イラッとしたんだよなー。男ならハッキリしろよ!って」 いつの間にか笑みの消えた本田さんの横顔を、静かに見上げる。 熱いコーヒーを口にしたからか、本田さんの吐き出す息はより一層白くなっていた。 「つまり……忍くんの為に発破かけたってことですか?」 「………んー」 本田さんは少し考える素振りをして、直後私を見下ろしながらニッとイタズラっぽい笑みを見せた。 「半分正解」 「………は?」 「忍の為……って言うよりは、萌の為、かな」 不意に古川さんの名前が出て、私の心臓はドキッと大きく弾んだ。  
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